時を超え、色あせることのない永遠の絵画
ギリシャ・ローマ時代から続く、人々の生活と共にあるモザイク
モザイクとは、色とりどりの大理石やズマルト(モザイク用色ガラス)などを、テッセラと呼ばれる小片に加工し、それを用いて絵や模様を表現する装飾技法。
素材がそれぞれの表情を保ったまま組み合わされるので、独特の温もりや趣のある作品を創り出し、色褪せないことから「永遠の絵画」とも呼ばれています。この技法は特にギリシャ・ローマ文化圏で育まれ、主に建築物の床や壁面の装飾に用いられてきました。現代でもヨーロッパで街歩きをしていると、教会や美術館・博物館はもちろんの事、住居や店舗の装飾や、地下鉄などの公共施設の装飾としても出会うことが出来ます。
「使い捨て」ではない持続性のある豊かな空間装飾
一方日本ではみなさんご存知の通り、タイルでのモザイク装飾文化がとても発達しています。
日本ならではの職人技術が育んだ素晴らしいタイルモザイク文化と、ギリシャ・ローマ時代からのモザイク文化。モザイク工房モザイコカンポは、ここに「使い捨て」ではない持続性のある豊かな空間装飾の可能性があるのでは、と考えています。
彩りだけではない、道具として暮らしにとけ込んだモザイク
古代ローマでは、生活空間をモザイクで彩っていました。玄関床には犬の姿のモザイクを施し、所謂「猛犬注意」の役割を、客間には豪華な食材のモザイクを施し、客人に素晴らしいもてなしを予感させる。「石のカーペット」とも呼ばれるモザイクは、生活の各シーンをより豊かにしてくれていたのです。
現代日本に住む私たちが、そのままローマ貴族の生活をお手本とするのは現実的ではないかもしれません。しかしそのエッセンスを取り入れることで、生活を豊かに彩る事は可能ではないでしょうか。
例えば、ローマ時代の魚のモザイクを作り、キッチンに飾ってみる。2000年前に作られたその魚は、今尚生命力を感じさせてくれます。
例えば、大事な人のイニシャルを、ずっと色褪せない素材で作りプレゼントしてみる。似合う色を考え、石やガラスを一つ一つ手で割る時間は、きっと流れ方が違います。
例えば、リフォームの際タイル一枚分のスペースを空けておき、自分のモザイク作品をはめ込んでみる。時間をかけて作ったモザイクが大切な家と一緒に年を重ね、ご家族の記憶の中に残っていく愉しみがあるのではないでしょうか。
Mosaico(モザイク)Campo(原っぱ)は、モザイクと暮らしを繋げるアトリエです。
「原っぱ」は、洋の東西も、昔も今も、何もかもを超えて、何でも出来る自由な場所の象徴です。
さまざまな形で「生活とともにあるモザイク」を楽しむ「原っぱ」。
モザイコカンポはそのような場所でありたいと願っています。
荒木 智子 │ Satoko Araki
1980年生まれ。熊本県出身。京都造形芸術大学卒業後、イタリア・ラヴェンナのモザイク工房Koko Mosaicoにて伝統的モザイク技法を学ぶ。
帰国後は東京と熊本を拠点とし、モザイク工房モザイコカンポを主宰。「生活とともにあるモザイク」をテーマに、教室の運営、商業施設や個人住宅へのモザイク制作などを行う。ギリシャ・ローマ時代からのモザイク文化と、近現代日本独特のタイル装飾文化を融合させ、持続性のある豊かな空間を生み出したいと考えている。